東京の強さに驚き、私の弱さに驚く。


免許センターにおいて、あまりに平静なほかの人たちの様子に驚いたばかりでしたが、
街に出ると、もっともっと驚いたことがたくさんありました。

まず、私は、免許センターを出て、右に行ったらいいのか、左に行ったらいいのかもわかりませんでしたので、
まずは「駅へ行こう」と思いました。
電車が走っていないことは分かっていましたが、まずは駅に行くことしか思いつかなかったのです。

地震がおきたのは15時頃だったのですが、
あれだけの地震がおきても、サラリーマンは、みな「家」ではなく「会社」に帰るのですね。
当然といえば当然ですが、地震とともに「帰宅ラッシュ」は起こっていませんでした。
それが私にとってはラッキーに働き、たまたまオフィスに戻ってきたサラリーマンが乗っていたタクシーを、
運よくつかまえることができたのです。

はっきりいって、あの日タクシーをつかまえることができた人がどれだけいたでしょうか。
何時間も何時間も並んでも、タクシーに乗れなかった人が山のようにいたはずです。
なのに、私は、外にでてほんの5分ほど駅に向かって歩いたところで、誰かの降りたタクシーをつかまえることができたのです。これほどラッキーなことがあるでしょうか。
ここでタクシーをつかまえることができなかったら、おそらく徒歩では今日中に家にたどり着くことは不可能だったでしょうし、
きっとこの先何時間歩いてもタクシーには出会えなかったでしょう。

そんなわけで、不幸中の幸いも幸いで、私は無事に家まで帰る手段をとりあえず手に入れることができたのです。

タクシーからの光景はといえば、驚くほど普通でした。
倒壊どころか、ほころんでいるビルすらなく、ガラス一枚割れず、かなり古そうな「○○商店」みたいなところですら、
まったくなんの損害も受けていませんでした。

「東京のビルって、こんなに強いんだ」

驚きました。
私は、クライストチャーチで倒壊している多くのビルをたくさん見てきましたので、
ビルの中にいること自体が「恐怖」でした。
ところが、もし「地震でビルは倒れない」ということが前提であれば、
むしろ、外よりも、ビルの中のほうが安全?かもしれません。
何事にも「絶対」はありませんが、とりあえず震度5強でまったく被害を受けなかったのですから、
これで、東京のビルが安全だということが、ある程度立証されたわけです。

そして、次に驚いたことは、地震で閉めているお店が全然ないのです。みな通常営業続行です。
やっぱり、とても揺れて怖かったけど、ビルが倒れたりの実害がないので、すぐに日常に戻れるのですね。
それにしても、こんな状況で、店を開けていてもお客さんなんて来ないだろう。
なんて思っていたら、吉野家で牛丼を食べている人とか、ココイチでカレーを食べている人とかたくさんいるのです。
パチンコ屋も本屋も人がたくさんいました。

「みんな避難しないんだ」

このことにまた驚きでした。

そして、遅遅として進まないタクシーで、御茶ノ水あたりで17時を迎えました。
帰宅ラッシュです。駅はものすごい人であふれかえり、バス停は100M以上並んでいます。
タクシーを拾おうとする人が道まで出てきていますが、当然空車などありません。
本当に早い時間にタクシーを拾えたことは奇跡でした。

今回、よかったと思うことがいろいろありました。
・地下鉄に乗ってなくてよかった
・高層ビルにいなくてよかった
・人がたくさん集まっているところにいなくてよかった

安全な免許センターの建物で、あれだけパニックになった私ですから、
地下鉄や高層ビルや駅などの人がたくさん集まるところにいたら、
どれだけパニックになったことか、考えただけでも恐ろしいです。

でも、実際、そういうところで被災した人の話をニュースやラジオで聞くと、
みなさん冷静で、パニックなんて起こらなかったそうです。
私の勝手な想像では、駅で大地震なんて起きたら、
我先にと出口に向かう人で、階段で将棋倒し。。。なんてことになると思っていたのです。

この日本人の「冷静さ」にまた驚きでした。

こんなにパニックなのは私だけ??
タクシーに乗れたのもよかったです。
誰かと話をすることで、少しだけ気持ちが落ち着きました。

普通なら車で30分くらいのところが、3時間半かかって自宅まで到着しました。
タクシー代は12000円です。
でも、ここでタクシーをつかまえることができたのは奇跡で、
お金にはかえられません。

家に帰るまでの間、多くの人が黙々と道を歩いていました。
その数は半端じゃありません。
この渋滞の中、車もタクシーも、大抵1~2人くらいしか乗っていません。
同じ方向に帰る人は、同乗すればいいのに!と心から思いました。

これがNZだったら、間違いなく「ヒッチハイク」です。
「新宿」とか「横浜」とか書いたプラカードを持って立っていてくれたら、
私が向かう方向に行きたい人を、絶対に乗せてあげるのに!

日本では、さすがにヒッチハイクはないようです。
残念だなあ。

ようやく家にたどり着くと、母が待っていました。
私と連絡が取れないので、とても心配していたようです。
私は母の顔を見ると、安心して涙が出てきました。
「怖かったよー。怖かったよー。」と訴えることしかできませんでした。
本当に本当に怖かったんです。

震度5強でおおげさなと思うかもしれませんが、
クライストチャーチであの地震を体験していたら、
「慣れる」人もいれば、反対に「恐怖を募らせる」人もいるのだということがわかりました。
私は、自分的には前者だと思っていましたが、ふたを開けたら後者だったようです。

いつも日本に帰ってきたら、物欲と食欲を満たすため、毎日毎日忙しいのですが、
今回、日本に帰って来てから1週間もたつのに、
実は、まだ一度も外食していないし、一度も買い物にいっていないのです。
それだけでも、私を知る人からしたら「異常事態」でした。
自分の気づかないところで、地震による精神的ショックを受けていて、
食欲も物欲も湧かなかったんだということが、今更分かりました。

さっき、NZにいる姉から電話がかかってきました。
不安に思っていることを話したら、少し気持ちが晴れた気がしました。
やっぱり、こういうときに自分を救ってくれるのは家族なんだと
改めて思いました。

今日は、外に出る気がまったく起きず、床にふせって一日過ごしてしまいましたが、
明日は、少しでも気分転換できるように、外出してみようと思います。

 

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