ビジネスを買うということ


今回、私たちは、あるレストランビジネスを購入するのですが、
簡単にニュージーランドのビジネス売買について、ご説明させていただきます。

*以下、私個人の理解ですので、もし違っていることがあってもご容赦ください*

まず、「ビジネスを買う」というと、「家を買う」ような感覚で、
一度買ってしまえば家賃は発生しないような気がしませんか?
ところが、ビジネスを買うというのは、家を買うのとは、まったく構造が違います。
簡単にいうと、ビジネスを買っても、家賃は払い続けなくてはいけないし、
むしろ、ビジネスを買う=家賃を払う義務が発生するのです。

ビジネス売買とは、そのビジネスをする権利の売買のことです。
つまり、誰かが「巽を買いたいな」と思って、私たちがその誰かに巽を売ったら、
その人は、巽のオーナーとして、ビジネスを継続していくのです。

しかし、ビジネス売買といっても、いろいろなケースがあります。
たとえば、巽そのものが売買された場合、
メニューもレシピも、看板もスタッフも、全部そのまま引き継がれます。
端から見たら、オーナーが代わったことなどわからないですね。

中には、巽の場所が欲しいだけで、そこでイタリアンレストランをしたい人がいるかもしれません。
その場合には、ビジネスを買った後、巽はなくなり、そこに新しい店ができあがります。

そのどちらもビジネス売買です。

そして次に、営業している店を買うのか、すでに閉店している店を買うのか、というのもあります。
もちろん、営業している店のほうが、価値があがります。
では、すでに閉店している店を買うことに、何のメリットがあるのか?
まず、営業していないことにより、ビジネスの価格は安くなります。
でも、レストランに必要な機材はすべて残っていますので、
それも含めてビジネス売買をすることができます。

では、営業も終了していて、中にある機材も全部売ってしまって空っぽになっている場合は?
それでもビジネス売買ができます。
その物件に「リース」が残っている限り、そこでビジネスをできる権利が残っていますので、
それだけでも売買が成立するのです。もちろん、高くは売れませんが。。。
リースは長く残っていれば残っているほど価値があります。
というのも、買ってすぐにリースが切れて、もし大家さんがリースを更新してくれなかったら?
せっかく買ったビジネスも水の泡です。
つまり、ビジネスを売買する基本中の基本は「リースがどれだけ残っているか」ということです。

また、ニュージーランドは、レストランを開業する際に多くのルールがあり、
それを全部突破するのは、簡単なことではありません。
例えば、車椅子用のトイレの有無とか、消防法とかに関わることで、
新しくレストランを作るとしたら、そのルールに沿った建物にするのに、相当な費用がかかります。
ところが、ビジネスを買うことによって、たとえ、そのレストランが、現在の基準をクリアしていなかったとしても、
そのレストランが営業許可を取っている過去の基準をクリアしていれば、大丈夫なのです。
これも不思議な話ですよね。

つまり、営業していて、はやっているレストランほど、高値がつくのは言うまでもありませんが、
最悪、営業を終了してしまっても、店の中のものを全部売り払ってしまっても、
リースさえ残っていれば、まだビジネス売買ができるという、ものすごい仕組みなのです。

たとえば、私たちが「巽を売る」とします。
まず、私たちが巽にいくら投資したか?
最初に買った値段や、改装にかけた値段、新しく購入した備品など。
それら全部で、いくらの価値があるか?というのが基本料金です。
それに加えて、「巽」として、ネームバリューがどれだけあって、
顧客がどれだけいるのか、というのが値段に上乗せされます。
はやっているレストランを買えば、何もしなくてもお客さんがたくさん来ますから、
苦労せずにビジネスをスタートすることができます。
つまり、はやっているレストランなほど、値段が高くなるというわけですが、
反対に、あまりはやっていなくて、家賃を支払い続けるのもしんどいレストランの場合は、
一刻も早く売りたいわけですから、値段は安くなります。

そんなわけで、「ビジネスの値段」というのは、いろいろな要素で決められていきます。

巽が地震に遭っていなかったら、一体いくらで売買できたでしょうか?
今では、何の価値もなくなってしまい、売ることができません。
立入り禁止エリアにある店を買う人なんていませんよね。
そういうわけで、私たちは、今まで築き上げてきた巽のビジネスとしての価値をすべて失ってしまったのです。

ちなみに、クライストチャーチで巽をはじめたとき、
「風」というレストランを買いました。
風は、一時期クライストチャーチを代表する日本食レストランでしたが、
私たちが購入したときは、すでにその精彩を失っていました。
そして、オーナーは、こんな状態でずっと営業を続けていくのもしんどいので、
1日でも早く誰かに売りたい。と思っていました。
この「一日でも早く誰かに売りたい」というのがポイントで、
こういう場合には、大抵値段は安く設定されています。

風はまだ営業していましたので、そのまま丸ごと買い取りとなりましたが、
私たちは、新しい店を作りたかったので、風の看板をはずし、店を改装し、
「巽」として、新しくOPENしました。
でも、風のスタッフはそのまま残りましたので、
新たにスタッフを募集するのも、それほど大変ではありませんでした。
レシピも残していくといってくれましたが、お断りし、メニューも一新しました。

このように、店の名前もレシピも全部料金に含まれていても、
使う使わないは自由なのです。

次に、今回ですが、
前回との違いは、すでにビジネスを終了しているということです。
もともとは、とても高値の店でしたが、ビジネスが終わった時点で、値段が下がりました。
当初の値段では、私たちには手の届かない値段でしたので、
営業が終了してくれたことは、私たちにとって幸いでした。
もちろんスタッフもいませんし、看板もすでにはずされています。
新しい店としてイチから始めるしかありません。
でも、私たちは、最初から「巽」として店を営業するつもりでしたので、
これで値段が安くなるなら好都合でした。

そんなわけで、今回の店は、私たちの手の届く価格まで値が下がっていたので、
購入を検討することもできたのですが、
もし営業中であったら、とても手が出ませんでした。
そういう意味では、この物件に出会ったタイミングも、最高に良かったということです。

しかし、ビジネス売買ができるからといって、安心はできません。
冒頭で述べたように、ビジネスを買う=家賃を支払う義務が発生するのです。

この、家賃支払い義務に関して、私たちは、大家の審判を受けなければいけません。
この話はまた次回。

 

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