NZには、Food Safety と呼ばれる食品衛生のルールみたいのがあって、Food Control Plan というのにのっとって、様々なチェックが行われます。
これが、ちょっと信じられないくらいに厳しいんです。

年に一回衛生局の担当者みたいな人が店に点検にくるのですが、1週間くらい前に予約を取ってきてくれるので、抜き打ちではありません。
でも、抜き打ちじゃないとはいえ、「Food Safety が来る!」となると、どのレストランも、それは必死にいろんな準備をします。
うちの店の下のカフェなんて、Food Safety の前日に、店を閉めたくらい!
まあ、そのくらい大変ということです。

まず、準備をする資料がいろいろあるのですが、ほとんどが、日々記録しなければいけないものばかり。
もちろん、スタッフがやってくれてはいますが、何がどこに置いてあって、何がどこに記録してあって、といった整理整頓、また、抜けがないかのチェックなどをしておかないといけません。

例えば、今回準備した資料は、

・スタッフトレーニングシート
食品衛生をきちんと理解しているか、様々な項目にチェックを入れながら研修をしたという全スタッフ分の記録。

・日誌
毎日、その日にあったことを記録。例えば冷蔵庫が壊れたとか、スタッフが風邪をひいて休んだとか、お客さまからクレームがあったとか、いつもと違うことが起こったものはすべて記録。
それを4週間ごとにチェックしたという月誌。

・冷蔵庫温度管理表
毎朝、出勤したらすべての冷蔵庫の温度をチェックして記録。

・温度計チェック表
冷蔵庫の温度が正しく測定できているかどうか、3カ月に一度温度計の故障チェック。
氷水に入れて温度計が0度まで下がるか、熱湯に入れて温度計が100度まで上がるかをチェックした記録。

・Cool Down の記録
調理したものを冷やす場合、2時間以内に室温まで下げて、そのあと冷蔵庫にいれて4時間以内に5度以下まで冷やさないといけないのですが、「温かいものを冷ます」という作業をしたら、毎回2時間以内に室温まで下がったか記録。その後、冷蔵庫に入れて4時間以内に5度以下まで冷えたか記録。うちの店で言うと、ご飯とか毎日炊くので、膨大な量の記録。

・クリーニングの記録
まずは、どこをいつ掃除するかというリストを作成。(例えば冷蔵庫は毎日。換気扇は月に一度など)そして、それらの掃除を、いつ、誰がどのように行ったかという記録。

・メンテナンスの記録
冷蔵庫やガスオーブンなど、故障したらどこに連絡するかの業者リストを作成。
それらの業者が、いつ来て、どのような作業を行ったかの記録。

・クレームの記録
お客様から料理に対してクレームがあった場合、いつ、どの料理で、どんなクレームがあったか、それに対してどんな処理をしたのか、の記録

・デリバリー温度の記録。
冷蔵や冷凍の商品が届いた時に、きちんとした正しい温度で届いているか、届いた時にまず箱を開けて温度をチェックした記録。

・契約している食品業者リストと、業者の食品取扱許可証
業者のリストを作成し、各業者から食品取扱許可証を取り寄せる。有効期限があるので、一度取り寄せても、毎年有効期限を確認し、切れていたら再度取り寄せる。

とまあ、今なにも見ずに、ざっと覚えているだけでこれだけあります。

ほとんどが、日々記録しなければいけないものばかりですが、「Food Safetyが来る」となれば、きちんとすべての書類が揃っているのか確認するだけでも、結構時間がかかります。

はっきり言って、ものすごい紙の量ですよ。
銀行に行って口座を開けるのですらパソコン画面でちゃちゃっとやっちゃうようなこの国で、この紙の量はスゴイ。

で、担当者が時間にやってきたら、まずは、これらの資料すべてに目を通すわけですね。
必要な記録が正しくなされているかどうか。
そして、随所に鋭い質問を挟んできます。

例えば、「食べ物に異物が混入していたらどうしますか?」
「アレルギーのお客様が来たらどのように対応しますか?」
「まな板は食品ごとに、どのように使い分けていますか?」
「緊急時の出口はどこですか?誰がどのように誘導しますか?」
「テーブルを拭くときには、どの洗剤を使っていますか?」
「実際にいつもやっているように拭いてみてください」
「洗剤は何倍濃縮ですか?有効期限は切れていませんか?」
「冷蔵庫の温度チェックを実際にやって見せてください」
「スタッフが咳をしていたらどうしますか?」
「炊飯器のごはんは、何時間後に破棄しますか?」
「鶏肉の料理は、調理後肉の中心部が何度になっていますか?」
「温め直した料理が、正しい温度まで上がっていることをどのように確認しますか?」

などなど。そりゃもう質問攻め。
正直、こんなもんじゃないです。これ、全体の半分にも満たない質問量。
しかも、この担当の女性「鉄の女」の異名をほしいままにする、ニコリともしない厳しい方なんですよ。

で、今日は10時に来て、11時半頃に終了。
100点満点から、減点方式でスコアをつけて、ランク付けされます。
今年は、スタッフが、きちんと記録をつけてくれていたおかげで、めでたくAグレードを頂くことができました。
実は、オークランドは、Aを取るのはそれほど難しくなく、ほとんどのレストランがAなんですが、クィーンズタウンでは、Bランクのレストランもたくさんあるんです。
鉄の女のチェックする目が相当厳しいのだと思います。
「あの人は、きっとクィーンズタウンのどこのレストランでも食事ができないだろう。」と言われてしまうくらい。でもまあ、仕事ですからね。冗談も通じないようなあの感じは、もしかしたらニュージーランド人じゃないのかもしれません。

オークランドではAじゃないと「大丈夫?」って感じもあったのですが、クィーンズタウンでは、みんなBが普通くらい思っていて、あんまり気にしていない様子。
なので、今年は、結構気軽な気持ちで臨んだのですが、結果「A」だったことは、本当に普段からしっかりと記録をつけ続けてくれたスタッフたちのおかげです。
あとは、もちろん清掃もね。
日本人のレストランは、どこもすっごくキレイなんで、衛生面でマイナスがつくことはほとんどないんですが、やっぱり記録の不備や口頭質問でマイナスされるケースが多いみたいです。
ちなみに、C以下のレストランは、新聞にレストラン名が乗せられちゃうんですよ。恐ろしい!なので、Bだったらいいや。くらいに思っていたので、本当に良かったです!

キッチンの壁には、いろいろなFood Safetyのポスターを貼ってあります。
きちんと徹底されている感じをアピールします。

温度計が故障していないか調べる方法

まな板を色分けして、それぞれ何を切るのに使うのかリスト

あとは、掃除用具のこととか、料理を冷ましたり、温めたりする場合のルール。

まあでもね、食の安全を守るためには、こういうこともきっと重要なんですよ。
店側は、ものすごーーーーーく大変ですけど。
日本の食品衛生も、こんなに厳しいんですかね?
それとも、日本人はここまでやらなくてもみんな衛生管理がしっかりしてるけど、NZでは、きちんと管理されないと誰も衛生管理なんて気にしないから、国としてやっているんですかね?

何はともあれ、無事終了。
また来年です。

 

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2件のコメント

  1. お疲れ様でした。それにしても凄い基準と対応なんですね。日本では、せいぜい保健所と消防の立ち入り調査程度ではないんでしょうかね。
    気にしてみたことはないのでしょうがこのランクは、いろんなお店にも掲示されているのでしょうか? お店にとってプロモーションにもなると思うのですが。

    1. そうなんですよ。ニュージーランドでは、お客様から見えるところに掲示しなければいけないことになっています。オークランドでは、ほとんどの店がAなんですが、中華料理屋でたまにBも見かけます。クィーンズタウンでは、Bが多くてびっくりしましたし、飲食関係の人たちは、Aをとる難しさを知っているので、オークランドの時のように、Aを取ることにセンシティブになっている感じはしませんね。

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