ウチの店は、おそらく南島では一番の日本酒の品揃え。
ワインリストも日本食レストランではありえないほど豊富です。
これは私の趣味?でもあるんですが、例えば、「日本酒ならこれ」「梅酒ならこれ」「シャルドネならこれ」「ピノノワールならこれ」みたいな感じで、1種類しかメニューにないのが「つまらない」と思ってしまうのです。とにかく選択肢が欲しい。

でも、多くの他の日本食レストランのオーナーさんから「そんなに種類を揃えてしまったら、なかなかお酒もワインも回らなくなるでしょ?うちはそんなには置けないわ」って言われるんです。

ところがどっこい、種類が豊富だと、お客様が興味を持って、今まで日本酒を飲んだことがない人なら「頼んでみようかしら」って気になるし、日本酒が好きな人なら選ぶのが楽しくなるし、「どれがおすすめ?」みたいな感じで会話も生まれるんです。結果、種類を揃えることによって、日本酒そのものに魅力が出て、販売力も上がるので、12種類もある日本酒も、一升瓶で開けても古くなる前に売り切ることができるのです。

まあ、12種類ってのも、程よいと思っていて、ありすぎると訳がわからなくなるので、純米6種、純米吟醸3種、純米大吟醸3種の計12種類です。
そして、「Tasting Set」もやっていて、純米から3種選んで少しずつ飲める「純米セット」、純米吟醸、純米大吟醸はもともと3種類しかないので、全種類を少しずつ飲める「純米吟醸セット」「純米大吟醸セット」があります。あとは、自分の好みの酒のタイプを知りたい人には、純米、純米吟醸、純米大吟醸から1種類ずつ飲める「All Round Tasting Set 」もあります。提供するのは面倒臭いですが、なかなか人気があり、日本酒初心者や、私のように色々試したい人にはおすすめです。

で、何が下克上かっていう話なんですが、この度、コロナの影響かどうかは分かりませんが、日本酒を仕入れている先から「値上げのお知らせ」が来たのです。
通常3社から仕入れているのですが、A社は全品15%の値上げ、B社は全品10%の値上げです。C社は、クィーンズタウンの酒蔵なので値上げはありません。

正直、日本酒の仕入れって、日本で売られている値段では考えられないくらい高いんですよ。ま、海外からの輸送料があるから当たり前のことなんですが。
例えば、日本で2500円の一升瓶で売られている純米が、NZでの仕入れは$72(5000円くらい)ほぼ2倍。同じ酒蔵の純米大吟醸は日本で5500円なんですが、NZでの仕入れは$140(10,000円弱) 。ってことで、つまり仕入れはだいたい2倍なんです。同じ理由で焼酎も高いので、日本から来たお客様は焼酎が高くてビックリしますね。仕入れで$100を超える日本酒が、レストランで販売されたらいくらになるのか、そりゃ高いに決まってますよね。特にNZは消費税が15%ですから尚更です。

それで、今までは、A社のお酒が一番安く(大量生産されているお酒の扱いが多い)、次にB社(小さい酒蔵のお酒の扱いが多い)、一番高いのはC社だったんです。クィーンズタウンの酒蔵で、送料も0なのに、なぜこんなに高いのかというのは各方面から聞こえてきていましたが、家族経営の小さな酒蔵ですから、すべてにおいて「手造り」なんです。きっといろいろコストもかかるのでしょう。

それが、今回の一番安かったA社の15%の値上げと、割と高めだったB社の10%の値上げにより、C社が「最高値」の座を他社の日本酒に譲ることになったのです。
正直、値段が上がったからといって日本酒そのものの品質が上がった訳ではなく、日本酒自体は同じもの。そもそも品質の良いものしか入れていないので値段はもともと高かったのですが、さらに高くなってしまったというわけです。
一番高い一升瓶は、売値が$100も上がったものもあります。今までは「一番高い日本酒を頂戴」といって注文するお金持ちの中国人がたくさんいましたが、今はそれもありませんので、これから高い日本酒を販売していくのが困難になるであろう時にこの値上げ。本当に痛いです。日本では、消費税が上がった時に「店側がかぶるので苦しい」みたいなことを言っている商店がニュースでたくさん紹介されていましたが、うちはそんなことはしません。だって仕入れが上がっているんですから仕方ありません。加えて最低時給もあがりましたし(現在最低時給$18.9)、お店がすべてかぶっていたら経営が立ち行かなくなります。仕入れが上がって人件費があがったのなら、申し訳有りませんが商品の値段をあげるしかないのです。こんな風にして、ニュージーランドの物価はどんどん上昇していくのでしょうね。

で、ここにきて、満を持してとうとうNZに上陸することになった銘酒「獺祭」。当然高いわけですよ。4月頃に入荷すると聞いていて、すでに発注していたのですが、コロナの営業でロックダウンとなり、そのままになっていました。ところがつい先日「獺祭入荷しました。予定通り発送してよろしいでしょうか?」と連絡があり、突然の観光客の激減でどうしようかと迷いましたが、予想外に国内の観光客の方が来てくださっているので、NZ人にどれだけ需要があるのか疑心暗鬼ながら、注文していた獺祭を配送していただくことにしたのです。

ウチの店で入荷した獺祭は3種類。「獺祭45」「獺祭3割9分」「獺祭2割3分」。
一番安いやつ一種類でいいんじゃないの?という周りの意見を聞きながらも、結果3種類入れることにしました。これはいつもの私の「一種類じゃつまらない」という考え方からです。3種いれれば「獺祭Tasting Set」もできますし、ただ「獺祭入荷しました」とするよりは、3種もあった方が、一番安い獺祭を売りやすくなるとも思いました。一番高いのがそうそう出るとは思っていませんが、Tasting Set でなら飲みたいという人もいると思うんですよね。

そして、今回は、お酒がもっと分かりやすくなるように、お酒の味を表す「酒チャート」と、それぞれのお酒の精米歩合をリストにしたものを酒メニューの隣のページに載せることにしました。今までは口頭で説明してきましたが、それを補足するものとして、お客様がさらに日本酒に興味を持ってくれたら、お互いwin-win だと思いませんか?

精米歩合が上がると、お酒の値段が上がっていくのも分かりやすいし、精米歩合と酒蔵の醸造方法によってその味わいが変わってくるのがチャートで見ることができるので、好みの酒も選びやすくなると思います。
実は、現在、うちの店には、日本で酒ソムリエとして働いていたスタッフがいるんです。彼は昼間はクィーンズタウンの酒蔵で働いていて、夜はうちの店で働いているんです。お酒のことを聞かれると「酒ソムリエ呼んでくるね」といって、あとは彼にお任せ。ただお酒をお勧めするだけではなく、お酒についての説明もしてくれるので、飲むだけじゃなくてお酒の知識も得られて、 お客様はいつも大満足。

今回獺祭が3種類増えることになって、今まで12種類だった日本酒が15種類になるわけですが、獺祭は別カテゴリーで販売できそうで、まだ入荷しただけでメニューには載っていないにもかかわらず、彼のおススメで、すでに2日で5組のお客様が獺祭を注文されました。やっぱり、商品の品揃えだけではなく、それを販売することができる人がいるというのは、本当に大きいと思います。良い酒を揃えるのは私の仕事ですが、それを販売してくれる彼に感謝です。彼も「海外で、これだけの良質な日本酒をたくさん揃えているお店で働けて、お客様に日本酒の話をたくさんすることができる環境は最高です!」と言ってくれていて、こちらもwin-win です!

というわけで、新メニューは現在作成中で、それから印刷をして、製本をして、7月開始を目指しています。獺祭が加わることによって、日本酒の値段が底上げされることは予測していましたが、各社の値上げによって予想以上に値段が上がってしまった日本酒たち。しかも値上げ幅の違いから、メニュー内での値段の順位も大きく入れ替わりました。これからは、今までの売れ筋商品に変化がみられるかもしれません。
とりあえず、オーストラリア人が7月には戻って来ることを大前提で入荷した獺祭ですが、その見通しはまだまだ全然立っていません。まずは細々と、NZ国内旅行者に販売していきたいと思います。

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