実録。立入禁止の巽に侵入してきました。


先ほど我家へ「パスポートを取りに行きたい」といって、警察付き添いのもと戻ることができましたが、
実際の目的は着替えを取ることと、携帯の充電器を持ってくることでした。
これは無事に成功。
次のミッションは、巽へ戻り、すべての火の元を切ることです。
避難のとき、とてもじゃありませんが、電源を落とすことなんてできませんでした。
冷蔵庫などはいいですが、ディープフライヤーやウォーマーなどは、電気が戻ったときに空焚きとなり、
本気で火事になりかねません。
日本でも、「地震のときはまずはガスの元栓をしめろ」といいますが、
とてもじゃありませんが、自分が逃げるのが精一杯で、そんなことをしている暇はありませんでした。
しかも、すぐに戻れると思っていましたし。
昨日の晩も、「今夜店の電気が戻って、火事になったらどうしよう」と心配で寝付けませんでした。

巽は大聖堂から徒歩1分という超街のど真ん中で、まっさきに退去命令が出た場所です。
軍隊や警察が、道を固めています。
そうそう簡単に中に入れるとは思っていませんでしたが、挑戦あるのみです。
中に入れれば、運がよければ、置いてきたノートパソコンと、携帯電話も取ってくることができるかもしれません。

私たちは、恐る恐る警察官に近づき
「すぐそこにあるレストランのオーナーだけど、避難のとき、火元を全部つけっぱなしにしてきてしまいました。
今は電気が通ってないからいいけれど、電気が戻ってきたときに、火事にならないか心配です。
中に入って、すべての電源をOFFにしてきたいのです」といいました。

最初は「誰一人、このエリアに入ることはできない」と止められましたが、
事情を説明すると、「そういうことなら、対策本部に行って、シティカウンシルの許可をもらってきて」と言ってくれました。
対策本部とは、あのニュースにいつも出ているアートギャラリーのところです。
まずは入り口のガードマンに事情を説明し、中へ入れてもらいました。
最初に話を聞いてくれた人は「自分の判断ではわからない」と、別の人を紹介してくれました。
その人も、わたしたちの話を聞いて、どうしようか悩んでいたのですが、
そばにいた電気系技術者の人が、「僕が一緒にいってあげるよ」と言ってくれたのです。
彼が一緒であれば、あのバリケードも通ることができます。
本来であれば、絶対に入れないのですが「火事になるかも」となれば話は別です。
かけあってみてよかった。。。
これ以上多くのものを失うなんて、想像もできません。

バリケードでは、付き添いが一緒でも止められて、彼が警察官に説明をしてくれました。
店に向かう途中、また大きな余震があって、信号がぐらぐらして、さらさらが入っているビルのガラスがビリビリと音を立てました。
「あー。余震が店に入る前でよかった。。。」

店には、表から入ることもできたのですが、パソコンや携帯は裏の事務所においてあったので、
裏口から中に入ろうとしました。
どさくさにまぎれて、回収できるかもしれないと思ったのです。
棚に保管していたワインが床に落ちて割れたようで、外までワインが流れ出ていました。
「もしかしたらだめかも」と思ってドアを開けると、棚が倒れて入り口を塞いでおり、そこからの侵入は不可能でした。

仕方なく、店側の入り口から中にはいったのですが、その惨状は目を覆うばかり。
つい3日前、私がいたその場所は、ものというものすべてが落下し、
冷蔵庫は全開となり、中のビールがなだれ落ちてきていました。
これは私の服もビールまみれだったはずです。
まずは、ホールのオシボリウォーマーを含むすべての電源を切りました。
次はキッチンです。
電気がつかないので懐中電灯を持参していました。
真っ暗闇の中、懐中電灯に照らされるキッチンは、惨憺たる状況。
当時キッチンにいた3人が、よくも無事だった。
あの時は逃げるのに必死だったけど、あとから改めてキッチンを見ると、
地震の大きさが分かり、また恐ろしくなりました。

奥の事務所にたどり着くためには、このキッチンを通り抜けなければなりません。
食器棚からは皿がなだれ落ち、炊飯器、味噌汁ウォーマーが道を塞ぎ、
反対側は倒れたディープフライヤーで油まみれです。
でも、ここを通り抜けなければ、事務所にはたどり着けません。

外から「大丈夫か?電源はOFFにできたか?」と声をかけられました。
もう時間はありません。
旦那がキッチンの電源をOFFにしている間に私は事務所へと進みました。
もう油とか割れた皿とかを気にしている場合ではありません。
事務所は大荒れでしたが、デスクの上に置いてあったノートパソコンと、旦那の携帯をカバンに入れ、
私たちは店をあとにしました。

今回は緊急ということで、特別に中に入ることが出来ましたが、
次にここに戻ってくるのは、立入禁止が解除されたときです。
一体いつになることやら。
スタッフには、今週いっぱいは自宅待機と伝えましたが、
日々進行していく状況をニュースで見ていると、
City Centreの立入は、まだまだ先という感じがします。
地震で崩れてしまったお店もあると思いますので、店が残っているのは不幸中の幸いでしたが、
裏をかえせば、つまりは、ここで再生することを考えなければいけないということです。
再生できるその日まで、今のスタッフが全員残ってくれる保証もありません。

今現在のお店の状況をここに写真でお見せできないのが残念です。
きっとみなさんが地震のことを忘れかけた1週間後とか、10日後とか、
立入禁止が解かれて巽にもう一度入ることが出来たとき、
写真でお届けしたいと思います。

ちょうど刺身弁当の注文がはいって、それを作っている最中でしたので、
床には刺身用の魚が散乱していて、すでに悪臭を放っていました。
次入るときが恐ろしいですね。

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