「サービス」は独り言。「ホスピタリティ」は対話。


昨日友人がお店に遊びに来て、
「気づかないことの罪」について、どう思うか聞かれました。
友人も、ホスピタリティ業界の人で、お店のスタッフとこの話題になったのだそうです。

どういうことかというと、
例えば、TATSUMI のマニュアルには、
「お客様のテーブルに料理をもって行った時、ドリンクがなくなっているかどうか確認し、
もし少なくなっていたら、おかわりを聞きましょう」
という項目があります。

スタッフには、大きく分けて3パターンあります。
1、マニュアルに書いてあることをきちんと遂行する
2、マニュアルなど関係なく、自らの感性で気づくことができる
3、マニュアルに書いてあることは分かっているが、実際の場になると気づけない

1のタイプの人は、「教わればできる」ので、
トレーニングを受け、経験を積んでいくことによって、成長が期待できます。

2のタイプの人は、基本のマニュアルだけ教えておけば、
あとは自分の感性と判断で仕事を遂行することができ、
のちに、他のスタッフをひっぱっていくことができます。

3のタイプの人は、本人にやる気があって、真面目で熱心な人であっても、
なかなか成長することができません。
それはなぜなら「自分で気づく」ことができないからです。

今回友人に聞かれたのは、この3のタイプの人のことです。

「気づくけどやらない人と、やりたいのに気づけない人と、どっちがダメだと思う?」

と聞かれたのです。

友人が、今日店のスタッフと話しをしたときの結論としては、
「気づくけどやらない人」は「性格」に問題あり。
「やりたいのに気づけない人」は「センス」に問題あり。
ってことで、両方ダメだってことだったそうです。

私も、このことについて考えてみました。

「気づくけどやらない人」は、
「気づく力」はもっているのに、面倒くさいからやらない。
つまり、やる気さえあれば、できます。
教育すれば望みがあります。

でも、「やりたいけど気づけない人」の場合は、
どんなに気づこうと努力しても、「気づき」は努力ではなく感性なので、
やる気があっても、結果として、できないということです。

私は、人柄的には、「やる気」がある後者の方を評価したいと思いますが、
では、いざそれが仕事となったときはどうだろうか?と考えました。

結論として、人間性の話ではなく、「仕事」という面だけで捉えた時には、
「やりたいのに気づけない人」の方が、難しいのではないか?と思いました。

というのも、実際、クライストチャーチの巽でも、過去二人だけ、話をして辞めて貰ったスタッフがいます。
ふたりとも、とても頑張りやさんでしたので、話しをするのはつらかったですが、
でも、これ以上働いてもらうことは、お互いにとって生産的ではないと判断しました。
二人とも、「やる気があるのに気づけない人」でした。

そして、本棚から一冊の本を手に取りました。

「おもてなしの天才」という本の「ホスピタリティという能力」という項目です。

この本には
「技術的な研修は容易だが、情緒(感性)面の能力を教えて習得させるのは、ほぼ不可能である」
と書かれています。

私は「教育」という仕事に携わって、すでに15年以上がたちますが、
「そんなことない」という思いは持ちながらも、この「不可能」の壁にぶちあたってきたことも事実です。
そして、この本には、このように続きます。
「人は、ものを投げつけられたら、さっと身をかがめる。それと同じで”優秀な反射神経”は、
生まれ持った本能と育ち方からできるもので、常に意識して気を配り、練習を積めばさらに磨きがかかる。
”正しいことをきちんとしよう”という感覚は、研修だけで身につくものではない。
”持っている”か”持っていない”かのどちらかだ。その”持っている人”をどうやって雇うかという研修が必要だ」

つまり、”ホスピタリティの能力”を持っていない人は、どんなに努力しても、
それは生まれ持ってのものなので、研修は不可能。
最初からそれを持っている人を見つけて雇わなければいけない。

ということが書いてあります。

では、そういう人をどうやって見つけるか。ということが、このあとに続きます。

1、楽天的な温かさ
心からの親切心、思いやり、グラスの飲み物につねに気づくセンス
→「サービス」は独り言。「ホスピタリティ」は対話。

2、知性
頭がよいだけでなく、学ぶことそれ自体を目的に、飽くことのない好奇心を抱く
→料理について学びたい、ワインについて学びたい、予約のお客様の「名前」以上のことを知りたいと思う姿勢

3、仕事に対するモラル
自分に出来得る最高の仕事をするという生来の傾向
→テーブルセットをする時、言われなくてもグラスの汚れを確認する気配り

4、共感
「他人がどう感じるか」と「自分の行動が他人をどういう気分にさせるか」を常に意識できる
→お客様がどんな目的でレストランに来ているのか、料理についてどんな感想を持ったか自然と感じ取れる感性

5、自覚と誠実さ
正しいことを誠実に最善の判断のもとに行う責任をもつ
→自分の空気や雰囲気がお客様に与える影響を理解し、プライベートでネガティブなことがあっても表に出さない

とまあ、こんな感じです。

長年教育に携わってきた身の上としては、ここに書いてあることすべてのことに共感できます。
でも、「言うは易し、行うは難し」です。

ちなみに私は「気づきたくないのに気づいてしまう」人です。
そっちの方を見ていたわけでもないのに、視界に少し入っただけで気づいてしまう皮肉な性分です。
そして、そのお客様の目の前にいるスタッフが、それに気づけないことに、
「なんで気づかないの~?」と、毎日嘆いている人です。
そして、「私が気づく前にスタッフが気付けるよう」日々トレーニングをしている人です。

「不可能」だなんて、言わないで。。。
ってのが、本心です。
できなくても頑張っている人を応援したいのは、人なら誰でも同じでしょう。
でも、経営者から見て、それが正しいのかどうかは、永遠の課題でもあります。

そして、他の本「ホスピタリティの教科書」には、このようにも書いてあります。

「感性を磨くためには、自己投資と想像力」

前述の本には、「感性は生まれ持ってのものと育ち方」と書いてありました。
でも、今からでも、自己投資をして、素晴らしいホテルに赴いたり、評判のレストランに食事に行ったり、
「ホスピタリティ」を経験することで、感性を磨くことができます。

「感性は、知識や教養ではない」
とも書いてあります。

お客様がお話しされていた絵のこと、コンサートのこと、ワインのこと、
なんでも興味を持って調べてみることです。
そうすることによって、知識が自信につながります。
勉強して得た知識は、ひけらかすためにあるのではなく、自分自身のためにあるのです。

そう。大切なのは「自信」をもつこと。
自信をもつためには「確実な知識」を持つこと。
まさに昨日、わたしが、スタッフの1人に言った言葉です。

ふーん。
私もまんざら間違ってはいなかった。

そんなわけで、「ホスピタリティ」について、「スタッフ教育」について、
久しぶりに談義したのでした。

日本のホテルで働いていた時には、いつもこういうことが隣り合わせで、
いつも本を読んだり、研修会に参加したりしていたけど、
NZにきてから、少し忘れてしまっていた気がします。

スタッフの教育をすることももちろん大事ですが、
教育する私自身の教育を怠ってはいけませんね。

「サービス」は独り言。「ホスピタリティ」は対話。

これは「おもてなしの天才」の帯に書いてある謳い文句です。
まさにその通り。
「サービス」は一方通行なのです。

「お客様の側に立つということは、お客様の言葉に耳を傾け、五感すべてで気持ちを汲み取り、
思慮深く、礼儀正しく、適切な応対をするということ。
お客様に、スタッフがつねに”I am your side”であることを感じてもらい、分かってもらうためには、
なにをして、なにを言えばいいか、スタッフ自身が考えなければいけない」」

これは、マニュアルではどうにもならないこと。
スタッフ自身が、勉強し、考え、自覚と責任を持って仕事に取り組まなければいけないということです。
そのための環境づくりと、意識統一は私の仕事です。

壮大な目標だなぁ。

 

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